フィッシュ!は、シアトルのパイクプレイス魚市場で生まれました。
ピチピチと活きのいい職場であるはずのパイクプレイス魚市場で働くスタッフ達は、かつてはどんよりとよどんだごみ溜めのような職場の中で、ただ報酬のためだけに、どうにか1日が終わればいいと気力もやりがいもなく働いていました。必然的に離職率も高かったのです。ところが、ある時点から、魚市場が活気ある楽しい雰囲気に変化し、観光客や近所のビジネスマン達が見学に訪れる優良市場に変化しました。このことを聞きつけた経営コンサルティング会社は、何があったのか、スタッフ達に張り付いて調査したそうです。
そこには責任を重視する革新的な職場環境を作り上げるための秘訣がちりばめられていました。遊び心と思いやりのある前向きな姿勢が、より多くのエネルギーと情熱、生産性と創造性を生み出していました。
一日のうちの長時間を仕事場で過ごす我々は、なぜ仕事場そのものを楽しく、よりよい所にできないのだろうか?よりよい仕事場で働き、生活の素晴らしさにつなげていけないものか?そのためにこの魚市場を世界一の魚市場にしよう!というプランを具現化するために、彼らは4つの原理(態度を選ぶ、仕事を楽しむ、人を喜ばせる、相手に注目する)を自発的に実践していたということがわかりました。
4つの原理のエッセンス
- 態度を選ぶ(仕事そのものは選べなくても、どんな風に仕事をするかは自分で選べる)
「態度を選ぶ」は、外の3つの原理を包含し、影響を与える核としての概念となります。ごみ溜めのような職場を批判だけして逃げ出すのも、勇気を持って向き合うのも、自分の人生を有意義なものにするか、退屈な長い時間にするか、すべては自分次第ということです。不機嫌な態度を持ち込んで憂鬱な1日を過ごすこともできるし、明るいほがらかな顔で現れて、1日を楽しく過ごすこともできます。今日1日をいかに過ごすかは自分次第。態度を決めてピチピチと活力あるあなたの職場を描こう!ということです。
- 仕事を楽しむ(遊び心を取り入れる)
仕事場は非常に真剣。でも深刻すぎる仕事の仕方ではなく、真剣に仕事をしながらも、やり方次第で楽しめます。我々の職場にユーモアとウイットを取り込もうということです。緊張感が強く責任の重い仕事ほど、ユーモアと明るさ、楽しさが必要です。その方がストレスの軽減、安全性の向上、自由な頭と心(創造性)の発揮、生産性の向上など効果が上がります。遊びのように仕事を楽しむには、まずは、自分の仕事に夢中になり、楽しく働くことを発見します。それが新しいエネルギーを生み出します。楽しいと1日が短く、仕事にも集中できます。他の3つの原理と結びついた形で「仕事を楽しむ」とき、遊びは適切で生産的なものになります。
- 人を喜ばせる(自分の求めるものではなく相手が求めているものを考える)
よいと思ったことには、惜しみない賞賛を贈りましょう。手助けすることや感謝の気持ちを表現しましょう。相手の期待を超えたサプライズやイベントを考え実行してみましょう。
和気あいあいとした職場の雰囲気づくりのために、相手を巻き込み、参加させ、いい思い出を作りましょう。いい思い出は相手の中でずっと生き続けます。そしてそれが自分自身の喜びに変化するのです。
- 相手に注目する(しっかりと向き合う)
人があなたを必要としている瞬間を逃がさぬよう、いつも気を配りましょう。物が相手なら同時にいろいろできますが、人に対しては心を集中させる必要があります。別のことを考えながら何かをしても、能率は上がりません。それなら1つのことに全力で取り組んだ方が集中力や創造性も高まります。
今、この時に注意を向けましょう。それは誰かと関わりを持つとき、その人に心を寄り添わせることを意味します。医療の仕事はいずれにせよ、自分を必要としている人と事柄に注意を向ける仕事です。しっかりと患者・部下・同僚・上司に注意を向けましょう。
フィッシュ!哲学を病棟に取り入れ、スタッフの認識を高める目的で、4名の担当者を選出しました。メンバーに関しては、フィッシュマインドを理解できそう、または理解していること、病棟スタッフへの認知を広げられるような存在であることを念頭に選びました。
まずは、スタッフ全員に「フィッシュ!鮮度ぴちぴちオフィスのつくり方」という本を読んでもらうところから始めました。
スタッフの読んだ感想としては、賛否両論が有りました。こんなの取り入れても、ここは病院なんだから上手くいかないとか、やりたくないとか、言われなくてもできているとか、やってみたい、なんだか面白そうなど、まあ様々な意見がありました。
ただ一つ、みんなに共通していた意見は、「仕事は楽しくしたい」ということでした。
私たちが、一日の大半を仕事に費やしています。だからこそ、その大変な辛く、時には大変な仕事をより充実した時間にしたいし、楽しくできたら、それにこしたことはないと思います。
みんなに共通した「仕事は楽しくしたい」という認識を掲げ、フィッシュ!哲学に取り組むことになりました。
まず、フィッシュ推進委員の活動しては、4つの原理(態度を選ぶ、仕事を楽しむ、人を喜ばせる、相手に注目する)を書き出し、スタッフステーションや休憩室の入口に掲げ、スタッフの目に入りやすいように工夫しました。
また、4つの原理について、スタッフの認識を高めるために、引き継ぎ後や空いている時間を活用し、説明する。日頃の患者との対応場面を振り返り、ここで4つの原理を用いて関わった内容と結果について話をするようにもしました。それに加え、時折、スタッフの認識を確認したり、今月は主に「態度を選ぶ」を意識してやってみましょうなどとし、推進委員が音頭をとり行っていました。
推進委員は、私から与えられた役目として、当初からどういう風に活動したら良いのかを考えて行ってくれていましたが、始めは負担だったと思います。でも、途中からフィッシュ活動の効果が見られるころになると、同じ負担でも負担に感じられるのは少なくなり、自らが率先して、以前に投稿したメッセージカードなどのアイデアを出せるようになりました。自然と注意を向ける、人を喜ばせる、仕事を楽しむという態度を選び活動できていました。
推進委員の中でも少しづつフィッシュマインドを身につけていけたスタッフは、患者の対応場面でも効果が見られました。目立った効果としては、感情的巻き込まれの減少と、感情的巻き込まれや対応に困ってるスタッフを見かけた時には対応を自らが率先して代わり引き受ける姿勢、人間関係を大切にする姿勢が高まって行きました。