このドキュメンタリー映画の中で出てきた「禍福一如」という言葉を私は初めて知りました。この言葉は、「ものごとは心の持ち方ひとつで幸せにも不幸にもなる」ということです。

この映画に出てきた主人公である南正文さんは両腕の無い日本画家です。口で絵を描きます。小学校3年生の時に両腕を機械に挟み、生死を彷徨い助かりました。それから引きこもる時期もありましたが、大石順教尼のもとへ行き、口で絵を描くことなどを学びます。嫌いだった絵を今ではその絵で人のためになるようにできていると亡くなる前の南さんは仰ってます。両腕を失い、色々あった時には不幸であったが、そのことがなかったら絵を描いて、人のためになるこんな幸せなことができなかったというのです。

私は、このドキュメンタリー映画を見ることで、色々な方に見ていただきたいなぁと思いました。その中でも利用者さんに見てもらいたいなと頭に浮かんだ方がいました。いくら辛いことがあっても、一生懸命していればそれが上手くなるし、またその辛い体験も人の役にも立つし、自分自身の成長にもつながる。病気になったことで失ったこともあるであろうが、病気にならなかったら無かった出会いや経験もあったはず。色々な辛い経験も勉強だと思って、それを超えた先には幸せがある。何かそんなことを伝えたいような思いと映画を誘えば良かったなぁという思い、そして、私が今行っている訪問看護でも、社会的リハビリを行い、人と会う練習や人の目にどう自分がうつっているかを体感してもらうなどのことも、ひょっとすれば一時的に過去の辛い対人関係を想起させてしまうかもしれないが、やり続けていくことできっと克服していけるのではないかなと思っています(これには、その人の状態や特徴を十分理解してからの導入が必要と考えています。誰にでも当てはまるわけではありません)

私のこれまでの人生経験や看護師人生の中でも、本当に辛く、時に非情な経験もしてきました。ですが、今はそれがあったからこそ、今の景色が見えているし、その経験があったからこそ利用者さんへの今の向き合い方ができると思います。

ですから、今は辛い状況やしんどい状況におられる方は、必要に応じて誰かを頼って、または自分で克服できるならやってみて、乗り越えた先には、きっと良かったなぁと思えるのではないでしょうか。

最後にこのドキュメンタリー映画のキャストや監督、それに関わった方々、今回の上映会に尽力された伊良波先生をはじめ、その他皆様に、この映画を見せていただけたことに感謝します。どうもありがとうございました。